青鬼2016 貞子vs伽椰子コラボ 制作時に心がけたあれこれ(概要編)

 

●はじめに

このプロジェクトはどちらかといえばオマケプラス程度のサプライズを期待されており、クオリティは極度には求められていなかったものと記憶しております。
また、プロジェクトを請けた方で、現場の責任者は神無月サスケ氏(以下サスケ氏)であり、私はもともとシナリオや演出関連のサポート役であり、彼からも「あまり無理はしなくていい」と申し出を受けていました。
おかげさまで比較的ゆとりのある空気のなかで作業させて頂けたことは今振り返ってみても感謝しかありません。
 
一方で、こういった版権キャラを扱う企画の作品で、ファンから見て「あともうちょっと詰めてほしかったな~」と感じるケースを、ネット上などで散見されることは以前から知っていました。
その原因はおおむね……
 
・制作現場のスタッフが扱う作品の内容に精通していない。(最悪、興味もあまりない)
・旬のキャラを扱う場合、旬のうちにリリースするために制作期間が短めになりがちである。
・キャラクターの把握に十分時間を割けない。(最悪、時間を割く発想もあまり持てない)
 
この3点に集約されると個人的に考えています。
そんな私が「制作現場のスタッフ」に身を置くことになったので、よくない轍は踏まないことを心がけました。
ゆとりを頂けたのを逆に好機ととらえ(ゆとりはチャンス!)大忙しで必要なこだわりを本作につぎ込みました。つまるところ、あれこれ作り込んだ部分は上からの要望ではなく、ほぼ私の「わがまま」の産物です。
そんなわがままを忍耐強く見守って下さった責任者のサスケ氏及び、プロジェクトを依頼された関係者の皆様には、この場であらためて御礼申し上げます。
 
 

●コラボ作品制作時に真っ先にやるべきこととは?

 
この記事に目を通すのはツクラーさん(RPGツクールを代表する、その系列のゲーム制作ツールを用いてゲーム制作をされる方)がほとんどだと思われるので、そちら向けに書きます。
まず、コラボ作品の制作にあたり、以下の点を心がけました。
 

①コラボする作品のキャラクターを速やかに把握する

②コラボにあたり、ファンの立場としてはどんなシーンが見たいか、優先順位をつけながら速やかに目星をつける

③ネタを絞り込んだら必要な素材を発注する
 
 
というのは、キャラクターの把握量に比例してやるべき演出が何かはっきり分かってきますが、ネタによっては素材を早めに仕込まないと間に合わないものが出てくるので、「見たいもの全てを盛り込む」となると、迅速なネタの取り込みと整理が必要になってきます。
 
 
キャラクターの把握に当たり、チェックすべき原作は
小説本約10冊前後、映画版もおよそ十数本と少なめだったのが幸いで、丸投げられてもどうにか何とかなる分量だったのが助かった点です
 
 
貞子vs伽椰子……映画版と小説版
青鬼……全バージョンのプレイ
貞子……小説版6冊、映画版リング~貞子3D2まで
伽椰子……小説版数冊、映画版呪怨呪怨ザ・ファイナルまで
 
ポイントは、
「気が乗らなくても、なんとか見ておくと必ず何かしら有用な指針やネタが降ってくる」ことで、
面倒くさくなるところを払拭できたぶんだけ細かい作り込みができることを何度も経験しています。
 
 
 ↓以下は横道ですが、まずまず大事なので小声で大にして記します(何のこっちゃ)
●個人の努力の限界
話はそれますが、これが昨今のソーシャルゲームのように、
キャラクターが何十人もいて、
それぞれにアニメ1~2話ぶんのエピソードがあって、
なおかつメインストーリーもアニメ4クール(1年ぶん)あるようなボリュームのある作品、
とのコラボだったとしたら……
作品をフルに把握しようとするとゲームプレイ抜きにしても1~2ヶ月近くはかかるでしょう。そんなケースの場合、
 
・全シナリオが把握できるデバッグ用ID(プロジェクト終了後は消去)の貸与を依頼側に要請する
・ひとりで抱え込まず、知恵袋役のできる方とのマメな相談と検討を重ねる
 
この2点を鉄板にして迅速なネタの絞り込みをしない限り、おおむね好評を得られる結果を出すのは困難に思います。
 
ツクール界隈に腕利きのツクラーさんは多く、その中の誰に仕事の縁がつくか分かりません。
そのとき、「気軽に相談できる窓口」は必ず確保しておくことをマキシマムにお勧めします。依頼側に嘆願しても恥ずかしくないレベルです。

 

 

 

●コラボで重要と考えた箇所

 

 コラボで重要なのは、出会わないはずの両者の個性をきちんと連携発揮させることです(重要!)

まず、プレイする方がどんなシーンを見たいかを考えたところ、「これは見たいだろうな」というものが少なくとも以下の点が考えられました。

 

・ひろしと経蔵&珠緒のやりとり

・化け物同士の対決シーン

・化け物の連携襲来シーン

・化け物の合体襲来シーン

・コラボレーションギミック(貞子や伽椰子要素のある謎解き)

・呪いの家(伽椰子邸)の探索

・俊雄とフワッティーの扱い

・目の見えない珠緒を貞子はどう呪うか?

・呪いのビデオの部屋(さだかや映画版)の探索

 

このときは制作期間が短めだったことと、青鬼の謎解き要素よりも化け物同士の対決の行方がより注目されると見込んだので、謎解き要素はメインストーリーに入れず、コラボレーションギミックのみに絞り、やり込み要素側にまわしました。

 

[ひろしと経蔵&珠緒のやりとり]

けいたまコンビが出ることは最初から依頼主側からの要望で決まっており、私も納得でした。

 

では、死ぬのは誰か?

 

登場人物を青鬼、貞子vs伽椰子のそれぞれの主役に絞ったため、途中で誰かを死なせる選択がなくなりました。

主役級をうかつに死なせてしまうとお互いの世界観の解説役がいなくなってしまうので。(これ注意!)

また、登場人物の心に余裕がなくなり、キャラを立てるのに必要な“雑談要素”を用いづらくなってしまうからです。

(映画版貞子vs伽椰子でも、けいたまコンビが死ぬのはラストギリギリのタイミングです)

 

かわりに、珠緒とひろしをひとりづつ行方不明にすることで、ハラハラ感を補填しています。

「ホラー感は出したいがキャラクターを死なせたくない」ときに、

“行方不明” “安否不明” は、なかなか有効な手法と考えています。

テストに出るかもしれませんよ(笑)

 

[化け物同士の対決シーン]

一番の注目点。

対決シーンは互角感を出すため、お互いダメージを受けながら、勝率が均等(お互い一勝一敗する感じ)になるように調整。(実際そうなると思う)

 

・青鬼vs伽椰子    →伽椰子の勝ち

・青鬼vs貞子     →貞子の勝ち

・青鬼vs貞子vs伽椰子 →青鬼の辛勝

 

俺……勝ったよ!

満身創痍の青鬼

貞子に片目と鼻(!)を髪で貫かれ、伽椰子に片腕をもぎ取られながらも、伽椰子を喰い返した青鬼をイメージ。

にもかかわらず、本人は割と平然そうなのがツボです。

 

 

[化け物の連携襲来シーン]

やはり、化け物が同時に襲いかかってくるとどうなるかも注目ポイント。

青鬼が一番気まぐれなので、青鬼のタイミングに合わせて貞子と伽椰子に動いてもらいました。

 

 

[化け物の合体襲来シーン]

映画版で貞子と伽椰子が合体してサダカヤになりました。そうなると、3者合体はどんな姿と能力になるのか。

普通に期待されると思います。

そこで、青鬼ベースタイプ、サダカヤベースタイプの両方を提示することにしました。

サダカヤ鬼

青鬼ベースタイプ(左)  サダカヤベースタイプ(右)

サダカヤベースタイプは映画版ラストのサダカヤが、青肌+やや筋肉質になるイメージ。

ただ、サダカヤベースタイプはそのままだとインパクトが弱い(ドット絵では小さくて分かりづらい)ので、

髪の毛から巨人青鬼が現れている形にして2体にしました。誰かイラスト化してくれないかなあ……(希望)

 

 

[コラボレーションギミック]
青鬼には謎解き要素があるので、コラボならではの謎解きで以下をやり込み要素側に実装。
 
・リングの謎解き

リングの謎解きメモ

使用している必須アミノ酸のリストは映画版「らせん」で用いられていたものを再現したものです。
ついでに小説版の設定を交えた貞子の独白も盛り込みました。
 
呪怨の謎解き
伽椰子のノートをギミックとして実装。
映画を見て驚いたのが、貞子の享年と伽椰子の生年が同じであったこと。

伽椰子の生年(=貞子の享年)

使わない手はないので、パスワードとして伽椰子の生年をノートに仕込み、リング側の謎解きにも使用するようにしました。
惜しむらくは、終盤暗い屋根裏でノートを金庫に入れるシーンを設けましたが、
青鬼ギミックのひとつ「暗い部屋で文字が浮かび上がる」(ここでは伽椰子の生年)をノートに仕込み忘れたこと。
そうしていれば貞子、伽椰子、青鬼からのトリプルギミックが出来上がったはず。
制作当時、そこまで発想がまわりきらなかったのが痛いです……
 

伽椰子ノートの仕掛け(そびれた)

完成型イメージ(縦読みで1966)
 なお、「1」の部分は貞子要素を混じえ、らせん形状にしてあります。
 
 
[伽椰子邸の探索]

マップが使えるので、呪いの家の探索は呪怨ファンならしてみたいかも。

貞子vs伽椰子の劇場販売パンフレット内の写真に伽椰子邸の間取りが映りこんでいたので、それを参考にマップを制作しました。

このマップを利用することに伴い、青鬼邸の地下と三階から上は省くことになりました。

伽椰子邸1階

伽椰子邸1階

 

 

[俊雄とフワッティー

引き合わせたらすぐにズッ友に(笑)

そこで、2人のコンビネーション攻撃を図書館に仕掛けることに。

ほか、親がマジメに?呪っている合間に子供らしく遊んでいる場面も盛り込みました(伽椰子邸でかけっこしてるシーン)

その勢いで終盤はこちらも合体してもらいました。

俊フワ

特徴は俊雄ベースにフワッティーの口、フワッティーの四角い頭の角部分を頭から生やして猫耳風にした感じ。なにげにチャームポイント(笑)

 

[盲目の方への呪い方]

「珠緒は目が見えないのでビデオを見られませんが、どうやって呪いますか?」

と貞子(脳内インストール版)にたずねると、

貞子「特別に、念写でビデオの内容を直接、相手の脳裏に焼き付ける」とのこと。(なるほど……)

その結果、探索範囲内で最も井戸に近い形の縦型洗濯機で、原作おなじみの「井戸の底から見上げる」シーンが出来上がりました。

 

伽椰子「それじゃあ私は横型洗濯機から襲おうかな」

と申し出てきたので、急遽ドラム式洗濯機のグラフィックを制作頂いた経緯があります。(かなり出来がいいので、現代素材の販売時に再利用的に収録して欲しいぐらいです)

 

伽椰子の出入り口(ドラム式洗濯機)

 

 

[呪いのビデオの部屋(貞子vs伽椰子映画版+α)の探索]

貞子vs伽椰子での呪いのビデオの内容は、殺風景な小部屋に貞子が現れる、というものでした。

マップが使えるなら、「呪いのビデオで映っていた部屋」は絶対に歩いてみたいだろうと考え、伽椰子の遺体が打ち捨てられた屋根裏に隣接するところに繋げて山場にもってきました。

 

当初は映画版にならって小部屋にしていましたが、いまひとつクライマックス感が出ないので、

ここに伽椰子と青鬼要素を足すと……?

と考えていると、まずは貞子からアドバイス

 

貞子私は小説版だと太古から続く悪意や怨念を継いでいるような設定になっているから、それを表現してみては?」

まず、部屋の中にビデオやDVDの棚が敷き詰められ、さらにそれが遥か目視も及ばないほど、それもリング状(実際にはらせん要素加えてコイル状の設定)に並ぶ形に。

 

伽椰子「じゃ、棚にノートも加えてくれる?」

とのことで、棚は貞子ビデオ・DVDと、伽椰子ノートが並ぶように。

 

青鬼「たくさんの棚を作り出すのに、僕らの力も必要だよね?」

青鬼は縁の下で活躍。皆さんお疲れ様でした……。

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呪いのビデオ・ノートの部屋